筑摩十幸な
Hテキスト屋の日記です
プロフィール

じゅうこう

Author:じゅうこう
ぷにぷにしてます



フリーエリア



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



しばらく放置していてすんません。
まだ来てくれる人がいるのはありがたいことです。




 ギザムが反撃に出ようとした瞬間――――
「させないっ!」
 直上から降りかかるエリナの声が、ギザムの動きを止めた。
 爆発の破片を空中でひらりひらりと蝶が舞うように回避し、一転、隼のような急降下で襲いかかる。空中舞踏と呼ぶのが相応しい、華麗なる奇襲攻撃だ。
「何だとっ!?」
「くたばりなさいっ! はぁあああっ!」
 赤いハイヒールのつま先が、猛禽類の爪を彷彿とさせる勢いでハバキに襲いかかる。白くしなやかなふくらはぎから太腿、さらには捲れ上がったスカートから純白の絹ショーツまで見えているが、まったく気にしない。全体重に落下の加速度、さらに筆から借り受けた霊力を加えた渾身の一撃だ!
 ドッカアアァァァァァァアアアァァッ!
 美脚に目を奪われたワケではないだろうが、強烈な跳び蹴りがまともにギザムの顔面をとらえた。
「ぐっぎゃああぁぁっ!」
 鼻血を噴いて、怪人の巨躯がゆっくりと倒れ伏す。おそらく鼻の骨はグチャグチャ、前歯もほとんど残っていないだろう。
 その脇に、エリナはトンボをきって華麗な着地を決めた。
「うわ……すげぇ……」
「エ、エリナ様……相変わらず手加減なしだな」
 異形の怪人の意識を一撃で断つ、まったく無慈悲な攻撃を目の当たりにしてAAA隊員たちも冷や汗を流す。
「フン。たわいもない」
 スカートの乱れを直すと、エリナはすぐ美少女モデルの顔に戻る。澄ました余裕の表情には死闘を繰り広げたとは思えない愛らしい微笑みが浮かんでいる。今度はそのギャップに、隊員たちは唸らされるのだ。
「獲物はもらっていくわ。それでは皆さん、ごきげんよう」
「あっ、エリナさん! 待って……」
 まどかが声を掛けるより早く、黒髪の退魔少女は獣人を連れて空間転移した。
「もう……勝手なんだから……少しは丸くなったと思ったのに……」
 手柄を横取りされ、まどかは疲れ切った溜息をつき、カクンと肩を落とした。

 それから僅か三十分後。安っぽいラブホテルのシャワールーム。
「まったく……守ってくれるのは有り難いが、ちょいとばかりやりすぎだろう」
 顔を洗いながら愚痴っているのはあのギザムだ。ハバキの超回復力で顔の傷はすでに癒えていたが、痛みが残っているらしく、盛んに顔をしかめている。
 実はあの廃ビルに集まっていたのはチンピラ同然の雑魚で、麻薬ネットワークの幹部でもなんでもない。しかし彼らが死亡したと思い込んだAAAは、今後捜索してこないだろう。
「なあ、エリナ様よぉ」
 シャワールームから出たギザムの視線の先にエリナはいた。
 円形の桃色ベッドの端に赤紫の瞳をボンヤリと開いたまま、ちょこんと腰掛けている。まったく微動だにせず、呼吸すらしていないのではないかと思うほど。精気を失った美貌に、あの時の覇気漲る精悍さはない。まったくもって生きたお人形、マネキンのようであった。